景色の中に見るモノクローム
naotsugu yoshida × neutral
2022年4月15日 〜 17日
会場 ten(東京都江東区)
彼の作り出すモノクロの世界から
わたしは変容していく豊かな色彩を見たのですが
浮かび上がる情景と共に、深い愛情のような
エロティシズムを感じたのです
それは決してバタイユが論じた禁忌的な意味ではなく
叙情的で精神性を帯びたものです
その美しいフォルムを眺めていると
彼が白や黒といった”色”を選んだことは
自明だということは明らかですし
清らかで凛とした佇まいは静寂さを纏い
わたしの心にそっと触れていきました
neutral 北嶋竜樹
01 わたしが見たもの
スマホがあればカシャっと1枚
SNSというインターネットの渦は
あっという間に拡散するけれど
わたしやあなたの見たものが
同じ景色とは限らないってこと
無釉白磁切立湯呑:吉田直嗣
02 白とか黒とか
そろそろ白黒はっきりさせようじゃないかって
白と黒、光と影、天と地、善と悪、
ぼくらは何かとふたつに分けたがるけれど
二元論で語れるほど簡単じゃないのよ
そもそもあなたが見てるのは白なの?黒なの?
どっちなのよ全く。。
あれ?なんか変になっちゃったじゃないのよ!
高台付杉形椀:吉田直嗣
03 幻影
かつてこの隅田川界隈は、耽美派として知られる小説家、佐藤春夫や谷崎潤一郎、芥川龍之介、永井荷風らが「幻影」の立ち現れる水辺の原風景として描いてきた場所です。激動の明治と昭和の狭間である大正時代は、正に「幻影」そのもののように弱々しく繊細な時代でした。憂鬱でデカダンスな日々を過ごす中、恍惚とした淡い夢を見ようとした彼らが、ユートピアのごとく現実でも空想でもない、あいまいな「幻影」を隅田川へと投影したのです。
無釉白磁椀:吉田直嗣
04 胸の内
沸々と湧き上がるものというのは
どこにでもあるような景色ですら
惹きつけられてしまう魔力のようなものを
秘めているということだと思うのです
白磁リムプレート:吉田直嗣
05 ten
あなたもわたしも、あれもこれも、
上も下も、表も裏も、
ぐるぐるかき混ぜて、交わる場所
ここではみんなが等しく愛おしい
白磁中鉢:吉田直嗣
06 気配と余韻
とても情緒的で語呂が良く、響きの美しいこの言葉は、ミュージシャンの原田郁子さんの楽曲タイトルから取りました。この言葉は微細に変化していく季節の移ろいのように、ふわりと風景を纏っているような感覚を覚えます。彼の作品を手にしてそう感じたように、この先も誰かの手に渡って、どんな風景を纏っていくのだろうかと、ひそかに心を踊らせたのでした。
無釉白磁汲出椀:吉田直嗣
夢のつづき
わたしの作品には料理がないことがある
それは実体がないだけで存在はしているのです
だって本当に食べたかどうかなんてわからないですから
あなたは夢を見ていたのかもしれないし
わたしが夢を見ているのかもしれないし
だからそっと物語を書き足したって別に構わないのです
(会を終えて)2022.4 neutral 北嶋竜樹