脈絡のない料理 vol.6
2022年12月18日 〜12月29日
会場 neutral(京都市北区)
人生って脈絡のない出来事の
連続だと思うんです
それが何であるかは
実はそんなに重要なことではなくて
その繰り返しや重なりが必要だから
僕らは延々と脈絡のないことを
繰り返すのです
neutral 北嶋竜樹
01 シルエット
ぱちんと薪が弾けて
乾いた音が小さく響いた
どれくらい眠っていたのだろうか
日も翳り、すっかり暗くなった部屋で
静かに差し込む光の気配を感じた
うっすらと聞こえてくる車の音に
ぼくはようやくぼんやりと目を覚ました
白磁平皿:黒田泰蔵
02 火あそび
炎の揺らぎは波に似ていて
じっと眺めていると
思わず吸い込まれそうになる
心地よい波動のようなものが
きっと流れていて
ぼくをそっと抱きしめてくれるに違いない
うん よし
今なら泳げる気がする
おっと!あぶないあぶない、、
火傷するとこだったぜ
ガラス鉢:昭和前期
03 エチュード
好きなこと、嫌いなこと。
楽しいこと、つまらないこと。
容易いこと、難しいこと。
見せたいこと、見せたくないこと。
得意なこと、不得意なこと。
かっこいいこと、かっこわるいこと。
やりたいこと、やりたくないこと。
ほんとはわかってる
何が美しいのかを
だから繰り返すのさ
古伊万里青磁平皿:江戸時代中期
04 言葉のはじまり、言葉のおわり。
この世界の裏側には現実化しなかった
可能性の世界ってやつが広がっているんだって
そこではね、犬は逆立ちするし
猫だって後悔を口にするんだ
そんな馬鹿なことって思うでしょ?
ぼくは別に死後の世界があるとか
そんなことはちっとも思ってないけどさ
実在するかしないかなんて
とっても曖昧なことなんだよ
古常滑山茶碗:鎌倉時代
05 ビッグイシュー?
先方のコンセンサスが取れたら
来週までにブレストして
大まかなスキームを作ってくれる?
プライオリティ決めて
ちゃんとエビデンスも出してね
よろしく頼んだよ
七寸平皿:安藤由香
06 日々のあわ
君のことは割と好き
とくに冬はね
いや、別にだからといって
他に好きな子がいるんじゃないかとかさ
そんなことは思わなくたっていいさ
だってそういうものでしょ?
あ、そうそう
なんだかノスタルジックな気分にさせてくれる
そういうとこも好きだよ
高麗青磁 大鉢:14世紀頃 / 堅手鉢:村山健太郎
07 喧騒と静寂
これからむかえる時に
胸を高まらせている
或いは、まもなく終わる時に
忙しくしているのかもしれない
期待と不安が入り混じったような空気は
何時になく僕の息を染めて
騒がしく点滅する灯りの下では
全くの静けさが訪れるのです
瀬戸本業窯六寸鉢:六代目 水野半次郎
08 考古学的視点
言葉は語り尽くせたとして
のこされた言葉たちは
何かを物語るのだろうか
跡形もなくなったものから
まるで考古学のように
記憶を象っていく
ぼくはそんなことが
出来たらいいなぁなんて
いつも思ってるんだ
黒漆大平椀:明治時代