脈絡のない料理 vol.4
2022年10月20日 〜10月30日
会場 neutral(京都市北区)
人生って脈絡のない出来事の
連続だと思うんです
それが何であるかは
実はそんなに重要なことではなくて
その繰り返しや重なりが必要だから
僕らは延々と脈絡のないことを
繰り返すのです
neutral 北嶋竜樹
01 はじまりのはじまり
しっかりと蓋をしていたはずなんだけど
だいたいいつも決まった時間にさ
シンとした冷たい空気が入り込んできて
目が覚めるんだ
ぶるぶるっと軽く身振るいをして
もう一度奥の方へ潜りこむと
なんとも言えない幸福感が身体中に染み渡って
僕はまたゆっくりと深い闇の中へと誘われる
朱漆椿皿:明治時代
02 ゆらめきモノローグ
無数の言葉や音の羅列が、次から次へと
浮かんでは消え、浮かんでは消え
吹き出しの中で蠢いている
見えない、掴めない、残らない
プロローグもエピローグもない世界では
これらはただただひたすらに
意味もなく繰り返し
スイスイと僕の中を泳ぐのです
灰釉深皿:昭和時代
03 空想と憂鬱の中で
「物憂げな顔したってだめだよ、
君の魂胆なんて全部透けて見えてるんだから」
「どうしてそんなことがわかるってんだ」
苛立ちと共に僕はそう言ったあと
少しばかり噛みついてやろうとも思ったけれど
やっぱりどうにも思考が追いつかなかった
ボードレールやマラルメに思いを馳せ
あるいは荷風や谷崎のように耽美な
大正文学にどっぷりと浸かっていたって
紡ぐ言葉はまるで駄目
散文になり、気は散り散り
全く味のしなくなったガムを
延々と噛み続けているような気分で
抜け出せないデカダンスな日々に
僕はそろそろ耐えられなくなってきていた
「まったくだぜこんな毎日は」
唐津焼刷毛目銘々皿:村山健太郎
04 夜の運び屋
すぅーっと息を吸い込んで
僕は深く溜めた息をゆっくりと吐きだした
やっぱりそうだ
君っていい匂いだよね
なんとなく気づいていたけど
近づくたびについふらふらっと
ついて行きたくなる
けどさ 君はいっつもどこにいるかわかんないし
急ににいなくなるし
気ままなやつだよな
まぁ、嫌いじゃないけど
瀬戸本業窯六寸鉢 :六代目 水野半次郎
05 ( ´_ゝ`) ٩(`ω´)و (>_<)
え?絵文字?顔文字?一緒じゃないの?
なんだか知らないけどさ
今どき使うのはおじさんだけっていうじゃない
別にいいじゃないかほっといてくれよ笑
古常滑山茶碗:鎌倉時代
06 突然の来訪者
君はいつもそうだ
何の連絡もなしにやってきては
わめき散らして、引っ掻き回して
散々暴れ回ったあと
何事もなかったように帰っていく
ほんと困ったやつだよ
縁布着拭漆平皿:大正時代
ジョワジー・ル・ロワ デザートプレート:1880年代(フランス)
07 空を泳ぐ魚たち
海じゃないのに海みたい
山じゃないのに山みたい
奥があるのに奥がなくて
するするとすり抜けては
気がつけばいなくなる
ねぇ 次はいつ会える?
高麗青磁 大鉢:14世紀頃 内折縁灰釉片口:戦前頃
08 かわいいこ
呼んでも来ないし、近寄ったら逃げるのに
時折り気まま愛想ふりまいてさ
気が済んだらまたいなくなる
なんなのさ全くもう
はっきりと申し上げますよ
君はずるいと思います
茶拭漆目弾き塗菓子椀:江戸時代