脈絡のない料理 vol.2
2022年7月19日 〜 31日
会場 neutral(京都市北区)
人生って脈絡のない出来事の
連続だと思うんです
それが何であるかは
実はそんなに重要なことではなくて
その繰り返しや重なりが必要だから
僕らは延々と脈絡のないことを
繰り返すのです
neutral 北嶋竜樹
01 17:50
そろそろかと時計を見ては
頼む、今日も頼んだぞ
そういつも心の中で唱える
そんな一縷の願いとは裏腹に
どんと構えて期待を寄せている
私もいるのだ
まぁまぁ、緊張をほぐすのも
とりあえず一口
まずはそれから
漆菓子皿:小倉広太郎 中国磁器:時代不明
02 記憶の水たまり
塩素くさい匂いだって
記憶にこびりついてしまったら
なかなかとれなくて
ふと思い出しては
淡い記憶に僕は溺れそうになる
白釉小鉢:TOKINOHA
03 朝雲 (あさぐもり)
僕は眠い目を擦って
すぅーっと息を吸い込んだ
まだ眠そうな素粒子たちは
しかたないなといった様子で
身体の中へと消えていった
今日はいちだんと暑くなりそうだ
古唐津平茶碗:安土桃山時代
04 プラスチックな君
ぶんぶん、ぐるぐる
ずいぶんと気持ちよさそうだね
君も、そこの君も
なんだか涼しげで羨ましいよ
堅手鉢:村山健太郎
05 潮騒
車もなければ彼女もいない
よくよく考えれば泳げもしない
それでも海が僕を呼んでいる
気のせいだって?
失礼な、僕だって新治の気持ちくらいわかるさ
潮の香りを嗅いだら胸の奥が騒つく感じ
そうやってさ冷やかすけど
君も好きなんででしょ
古常滑山茶碗:鎌倉時代
06 理不尽なこと
え、聞いてないんだけど
こういうのはさ、先に言っておいてもらわないと
すごく困るんだよね
いろいろ準備ってもんがあるんだから
漆皿:小倉広太郎
07 真夜中の覚醒
こんな日に限って明日は早いし
肌荒れだって気になるし
1分でも1秒でも早く眠りたいのに
ああああぁぁぁぁっ
ううううぅぅぅぅっ
ちっとも眠れやしないや
須恵器皿:松葉勇輝
08 アルペジオな関係
一緒じゃないとだめだって思ってたけど
私たちって別々でもいいみたい
重ならないのに重なるの
わかる? この感じ
追いかけちゃだめ
何の変哲もない連なりだから
旋律は美しくなるの
五寸鉢:宮田春花
後記
待ちに待った時がきた。そんな気分だった。東京を離れてからというもの、どこか落ち着かないでいた時間が長かったように思う。ひょんなことから神戸へ移り住み、1年も経たずして京都へ来た。いや来たのだけど、それは呼ばれたような、来てもいいよと許可されたような、そんな感じ。実は京都で活動を始めた昨年の1月は、まだ神戸にいたのだ。たった1年半前のことだ。そのころは神戸⇄京都を往復する毎日。忘れ物大魔王であるわたしにはちょっとキツかった。今思えばゾッとする。京都に来てからも、前のアトリエも前の前のアトリエも、間借りだった。それはそれで心地よかったのだけど、やはりこう自分だけの空間を手にすると俄然やる気も湧いてくる。そしてこの物件は奇跡の物件でもあるのです。築80年、昭和前期だが大正の匂いが残る古い町家である。程よく手直しはしているが、何ともバランスが良い。そして何より気がいい。そんな場所で始められるんだもん。それはそれは喜びも一入(ひとしお)である。そんな喜びを噛み締めながらいよいよスタートした。この場所でどんな物語が紡がれていくのか、ワクワクドキドキ期待を胸に、しっかりと地に足をつけた活動をしていきたい。
(会を終えて)2022.8.2 neutral 北嶋竜樹