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円◯en
2021年1月/2月/3月

会場 る京都(京都市南区九条町)

曼茶羅は、サンスクリット語で「円」や「全体」「集合」の意味を持ち、語源的には「本質を有するもの」「完成されたもの」といった意味も表します。そしてアーユルヴェーダの知識では一度の食事で「甘・塩・辛・酸・渋・苦」の六つの味(六味)を取り入れることが心身のバランスを保つためにも大切とされています。本作品では「円」をモチーフに曼茶羅からインスピレーションを得た六つの料理で構成されています。六つの料理それぞれに「六味」を割り当て、それらを変化させる「重・軽・油・乾・冷・熱」の六つの質を使って身体に取り込むことで、曼茶羅における「理と智」(六大)の関係を表し、サトヴィック(純粋で新鮮な食物)な食体験を通して自身の身体の内側に曼茶羅を描いていくインスタレーションです。

曼茶羅とは、言葉だけでは言い表せないものごとの真理や教えを描いたものです。言葉に顕して説いた「顕教(けんぎょう)」に対して、言葉以外の表現で教えを説いていったのが密教です。古代インドで釈迦が開いた仏教の中から生まれた大乗仏教の宗派として広まり、インドから中国を経て空海が真言密教として発展させてきました。「東寺」は空海が中国から持ち帰った密教を広めるために嵯峨天皇から任されたことで誕生した日本で最初の密教寺院です。密教寺院では本尊の東側に「胎蔵界曼茶羅」西側に「金剛界曼茶羅」を祀ります。この二つの曼茶羅を合わせて「両界曼荼羅」と呼びます仏教の世界では宇宙を構成している要素を「地・水・火・風・空」の五つ(五大)で出来ていると考え、密教ではこれに「識大」を加えて「六大」と呼んでいます。「胎蔵界曼茶羅」は五大(物質世界)の理(ことわり)を説いたもので理曼茶羅とも言い、「金剛界曼茶羅」は識大を説いたもので五大を認識しようとする心の働き(智 さとり)から生まれる曼茶羅であるため智曼茶羅ともいいます。「五大」と「識大」は対照的であると同時に本来はひとつのものである(金胎理智不二)ということを表したのが「両界曼荼羅」です。

01  環 (たまき)

生まれて死ぬまでの生命の循環の過程を「実を結ぶ」という一つの成果として捉え、木になった実を枝からもぎ取り食すことで生命の循環や普遍を表します。

 

地・重・甘(普遍)

莢蒾/薩摩芋/ビーツ/南瓜

03  うつつみ

 

言葉から受けとる印象には様々な側面があり「火」には本来あたたかで穏やかなやさしい一面があります。また対になる質と合わせることで感じとることができる残像が、そのものの特性を映し出します。これはあらゆるものに多様性が内在していることの表れでもあります。

 

火・冷・辛(温和)

豆乳/京くれない/生姜/枸杞の実/赤唐辛子/ニワトコの花

02  透(とう)の浮標

“けがれ”がなく清らかなものには、いくつかの要素が混じり合って象られていること。輪郭とは目に見えなくとも味覚や嗅覚で感じとることができるということを体感します。

水・油・塩(清浄)

精進出汁/松の実/五葉松

04  掬ぶ (むすぶ)

 

手に取ったり見たりすることは出来ないもの。感覚を持ってはじめて存在や現象を認識することができるもの。ここではそれを可視化することで「そこにある」ものが現れます。人はそれらの体験が蓄積され記憶がある存在を浮き上がらせ認識するのです。

​※この作品は2つの構成に分けて体験していただきます。

風・乾・酸(活動)

1  蕎麦/青大豆/蕎麦殻/京抹茶/邪払

2  百合根/蓮根/カリフラワー/菜の花/葉わさび/舞茸/はこべ/山クレソン​/芹

 実山椒/なずな/蕨/山うど/たらの芽

05  櫃 (ひつ)

 

五大という概念はそれぞれの地物に対応するものではなく「性質」として捉えます。「空」には包容力という性質を持っており、心が広く相手にこだわらず全てを受け入れるという意味があります。この料理は日本の古典的なものでありますが、本来掛け合わせることのない異素材を組み合わせて供することで一つの空間を表してます。

空・熱・渋(包容力)

聖護院蕪/パパイヤ/胡桃/白味噌/金柑/白胡麻油

06  たまゆらの象 (かたち)

「理(ことわり)」を表す五大に対して「智(さとり)」を表した識大という概念があります。これは色があっても見ようとする気がなければ無色と同じであるという意味であり、見ようとする心の働きこそが「智」であると説いています。すぐに消えてなくなる、実体があってないような感覚が、そこに何が存在しているのかを意識させる試みです。

識・軽・苦(智)

水飴/焼塩/カルダモン/菊花/檸檬

白湯と茶

貴船神社 御神水 / 中国茶 HANAE 華恵

 

鞍馬山の麓にある貴船神社は太古から水の神を祀っており、境内に湧き出る清水は御神水として古くから茶人が茶を点てるのに珍重した京の名水のひとつです。賀茂川の水源でもあり弱アルカリ性の良質な天然水です。neutralではこの水を白湯や出汁、茶に使っています。アーユルヴェーダの知識では白湯は土瓶で15分沸かしたものが良いとされています。過度なミネラルや不純物も取り除いてくれ、とてもまろやかな白湯に仕上がります。この「円◯en」のプログラムでは食前と食事中の飲み物にはこの白湯だけをお飲みいただきました。また食事の最後を渋味で〆るのはアーユルヴェーダの知識では過食を防いだり消化促進にもとても良いとされており、御神水で淹れた茶の渋味で締めさせていただきました。

ご用意した白茶は、標高2000-2100mの高い標高に位置する自然栽培茶園の樹齢100歳ほどの茶樹から作られた雲南省臨滄産の白茶です。口の中に広がる華やかな柑橘系のフルーティな香りと自然な甘み、そして喉の奥に吸い込まれるコクが特徴です。

こちらのお茶は新潟を拠点に中国茶・台湾茶を販売する「IDLE MOMENT」の戸田裕也さんにセレクトして頂いております。

茶種:雲南古樹白茶 産地:中国 / 雲南省臨滄

生産年:2019 春

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​おもたせ

理と智

今回のテーマである五大と識大をモチーフに作った「おむすび」です。フードロスの観点からも、ひとつは五大の料理で使用した食材の端材で作ったふりかけを纏わせています。もうひとつには意識を向けることで深い味わいを感じてもらえるように白米そのものだけを結んでいます。またお飲みいただいた白茶の茶殻を佃煮にして添えてございます。そしてよりサステナブル(持続可能)であることをテーマに、包みには竹の皮を使用しております。この竹の皮は洗って繰り返し使用できます。

表面に蝋状の皮膜を持ちながら適度な通気性と強靱な繊維質で強度もあり、フェノール物質の抗菌作用も併せ持ち、外部からの異物混入や食品の時間経過による細菌の発生を遅らせる効果があります。美味しさを保つことと環境に配慮すること、大切なことを先人達の知恵から学びました。

​お米は滋賀の近江で完全無農薬で作られている吉田農園さんの夢ごこちという品種のお米を使用いたしました。

​白米:吉田農園・夢ごこち

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